#2 独立するも社会のニーズに屈する

#2 独立するも社会のニーズに屈する

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東京を離れて、日光市に移り住んだ5年前のこと。
初めての独立に普通は不安を催す所ですが、失業保険もあったからか最初の半年間は全く危機感を抱かず遊び惚けていました。
大した下見もせずに引っ越した日光市だけど、そこは完璧とも言える最高の地域だったのです。
具体的に言うと、移住先は田舎と言われる日光市でも特に閑散とした久次良町であり、僕好みのとても静かな所でした。
ジョギングには少し遠いけど、中禅寺湖が割と近所にあります。勿論、男体山や女峰山も目の前にあり、自然を大いに好む僕にとっては理想的な場所でした。
「月に一回は男体山の頂に!」
当初はそう意気込んでたものです。でも、最初の一回目で男体山がトラウマになってしまい、結局あんまり登ることはなく……近くに絶景の滝が沢山あったせいか、山よりもそっちばかり行ってました。

日光では毎日が冒険です。
一日一日が非常に濃厚で、ストレスを溜め込む暇がありません。大自然のパワーにより、都会で浴びた負のオーラが日に日に薄れていくのを感じました。
まあ、始めの半年間はロクに仕事をしてなかったから楽しかったのも当然ですけれど。
引っ越して五か月目くらいになり、ようやく仕事のことについて真剣に考え始めました。

企業に勤めていた時は、用意されたプロットに沿ってひたすらシナリオを書き続けていました。
プロットも大まかな流れも向こうが用意してくれるんだから、そんなに大変じゃないんじゃない?と思うかもしれないけど、これが意外と重労働なんです。パソコンに向かい続けてるだけでも割と体力を消耗するし、なにより気疲れが半端ではありません。
企業からは「萌え系」のストーリーを任されてたんですけど、まずプロットの内容が受け付けられず「こんな糞シナリオで誰が楽しめるんだよ」って心の中で何度も毒づいてました。在り来たりのヘタレ主人公と、理由もなく主人公に惚れているヒロイン連中……あまりの不合理っぷりな構図に毎日ため息を吐いていたとです。

……けど、此れこそが現代社会のニーズなんですよね。
独立したことだし、これからは自分の好きなジャンルで執筆していこう!と意気込んで色々と試してみたんですが、成果は芳しくありませんでした。
売上はおろか、そもそも商品ページのビュー数(閲覧数)が低調なんです。
ノーブランドだし最初はこんなものだろうと思いながら、もう一つ僕好みの作風でゲームを販売してみるも、相変わらず閲覧数からして終わっています。
少し間を空けて、今度は世間のニーズに沿った作品を公開してみると、なんと最初の二作品に比べて閲覧数が30倍にまで跳ね上がったのです。本当です。
トレンディーという概念に、心から震撼しました。こりゃ、確かに個性が生まれにくいですわ。

やはり個人で生き抜くにはエロしかないのか。
「催眠」「巨乳」「ハーレム」「異世界」「洗脳」
この辺のキーワードを盛り込まないと新人はやっていけないらしい。
そう結論付けた結果、日光に滞在していた二年間は、社会のニーズに思いっきり媚を売った作品ばかり手掛けていました。

独立したのに、やってることが勤めていた頃と同じというのは皮肉な話です。
でも、それでも企業勤めよりはずっと精神的に楽だったんで後悔はしていません。
次回は田舎暮らしの悩みや収入について掘り下げていきたいと思います。